ブッシュクラフトでの焚き火を始める際に使う、天然着火剤入れとして2016年から継続的に制作し続けている当工房製品『三角ティンダーポーチ』のご紹介。
こんにちは。ハンドメイド工房「皮革工房禅問堂」のDaisukeです。
天然着火剤用のポーチ?
焚き火を始める際に使う『着火剤』と言えば、一般的なキャンプやバーベキューではホームセンターやアウトドアショップで販売されている石油系の染み込んだ固形のものや半液体状のものを思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、昨今キャンプスタイルの一つとして日本にも浸透してきたブッシュクラフト風のキャンプでは、自然の中から拾い集めた(あるいは作った)着火剤を用いて焚き火をスタートさせます。
天然着火剤となるものは大抵は何かの植物です。
採ってそのまま使えたり、加工が必要だったりします。

何が着火剤に適しているかは、ある程度の経験と知識が必要です。
このポーチはそんな拾い集めた着火剤を収納・携行するために作られた革製の袋となります。
三角ティンダーポーチ

なりたち
このポーチを当工房で初めて作ったのは2016年。イギリスのとあるブッシュクラフトナイフ作家の使ってる持ち物に影響されて作りました。
当時はまだブッシュクラフトという言葉さえもが日本では浸透しておらず、耳にされたことがあったとしてもサバイバルと混同して捉えられていたような頃。
その頃のティンダーポーチと言えば平たい円盤状の革の入れ物が殆どで、色や大きさの違いは作者によってあれど、形のバリエーションなどは無く、選択肢が無いようなものでした。
まだブッシュクラフトに触れたばかりの僕がそんな折に出会ったのが、イギリスのブッシュクラフトマンのオリジナルギアの数々で、その中の一つに今の当工房のティンダーポーチに強く影響を与えてくれたポーチがあったのです。
後にそのポーチをオマージュするにあたり、サイズ感や細かい部分は当工房で再設計する際に独自の改良を加え「三角ティンダーポーチ」の名称で今日まで作成し続けています。
また余談ではありますが、アウトドアメーカーのBushCraftInc.から2018年~2021年に発売されていた「ティンダーポーチ」(※現在は廃版)は、当工房が型紙を提供させていただきました。
そもそもティンダーって?

先ほどから「ティンダー」(Tinder)という言葉を使っていますが、そもそもティンダーとは何でしょう。
実を言うと「着火剤」と訳すのは正しくはありません。
広義的な意味では着火を促すものなので完全な間違いというわけではありませんが、ホームセンターで販売されているゲル燃料や文化焚き付けをティンダーと呼んでいいかと言うと、それは違うと言わざるを得ません。
ブッシュクラフトの焚き火においての始めの火種となるのは、ライターやマッチのように火として姿形が成りなっているものではなく、メタルマッチや火打石&火打金での小さな火花で火熾しを始めます。
この火花を受け止めて焚き火の最初の火種として成り立つのが「ティンダー」です。
日本では、この小さな火花を受け止める繊細な着火剤のことを火口(ほくち)あるいは火糞(ほくそ)と古くから呼ばれており、鎌倉時代の文献にも「ほくち」という言葉を散見することができます。
使い方
口の閉め方
ティンダーを始めとする小物を収納することは、どなたでも直感的におわかりいただけるとは思います。
このポーチには、耐久性とメンテナンス性への拘りとしてボタンやホックといったレザー製品定番の金属パーツは使用しておらず、紐とトグルのみで口を閉める構造になっています。
以下がこのポーチの閉め方です。

1.トグルを摘み、逆の手で紐を引いてポーチの口を絞ります。

2.ポーチの胴を縦にぐるりと一周するように紐を回します。

3.余った紐をトグルとポーチの間に巻き付け、紐のコブ(結び目)をトグルに引っかけて完成です。

濡れてしまった場合、汚れてしまった場合
防水効果はありませんので、中に濡れてしまったら困る物を入れているときは水濡れにご注意ください。
チャークロスやアマドゥなど少しの湿気も許したくないティンダーを入れる場合は、小さなビニールチャック袋などをインナーとして使うと効果的です。
ポーチ本体が濡れてしまった場合は、広げて乾かせば問題ありません。
濡れたまま畳んだ状態(収納状態)のままでいるとカビの発生の可能性が高くなります。
汚れに対しては基本はブラッシングです。汚れや埃を書き出すようにブラシ掛けを行います。
汚れが著しい場合、どうしても洗いたい場合は、薄めた中性洗剤を使い、完全に広げた状態で、手洗い、あるいは柔らかいナイロンブラシ等で洗ってから、風通しの良い日陰干しでよく乾かしてください。
直射日光のあたる場所や、ドライヤー等の熱風での乾燥は革が縮んで変形しますので避けましょう。
洗剤を使ってのクリーニングは色落ちや革へのダメージの原因になりますので、あくまでも最終手段とお考えください。
また、絶対に必要というわけではありませんが、革にガサガサ感とした強い乾燥を感じたら一般的なレザー用メンテナンスクリームを薄く塗布して適度な保湿を心掛けることで、より永くお使いいただけます。
着火剤入れ以外の用途
ティンダーポーチとしてブッシュクラフトの世界観に合うように作った革の収納袋ですが、あくまでも革の小物入れですので用途は限定されません。
例えば下記のような使い方はいかがでしょうか。
コインケース(小銭入れ)

サイズ感的にもぴったりなのが小銭入れ。
ほとんどの方が毎日ブッシュクラフトをされるわけではないと思いますので、ティンダー入れとしての用途よりも圧倒的に使用頻度が高いのがこの使い方です。
半分くらい開けば目的の小銭にアプローチできますし、収納状態で小銭がこぼれ落ちたこともありません。
収納した小銭が多くなっても内側の豚革が適度に広がってくれるので見た目以上に収納できます。

入れすぎると見た目がボールみたいになってしまいますが
僕自身も初期に作ったいくつかの内の一つを小銭入れとして今(この記事を書いている時点で約6年)も使っていて、最も実用している自作革製品だったりします。
トリートポーチ

飴やチョコなどのお菓子入れとしての用途。
むき出しになっている食べ物を入れるのはさすがに敬遠したいですが、小分け包装されている飴玉やチョコレートには使えます。
友達や仲間と行動していて「アメ食べる?」なんてよくあるシーンですが、その時に一風変わったレザー製ポーチに入ったお菓子を差し出されたら(差し出したら)どう感じるでしょう。
あるいは、キャンプの焚き火にあたりながらお酒を嗜む際に、ワインやウィスキーのお供として、広げた革袋に乗ったチョコレートなんていかがでしょうか。
さいごに

今回は当工房製品の一つである『三角ティンダーポーチ』をご紹介させていただきました。
ブッシュクラフトのエッセンスを取り入れたキャンプをされる方に是非使っていただきたいポーチです。
もしお気に召していただけるようでしたら、当工房のHP経由でお求めいただけますのでご検討いただければ幸いです。

2022年6月現在、実店舗はありませんのでネット販売のみとなります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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